2022.06.28
四号特例縮小法案が2022年4月22日に国会に提出されました。
こんにちは。アップルホームテクノストラクチャー広報担当です。 四号特例の廃止について、その是非を巡っては欠陥住宅問題を中心として長年議論が続いて来ましたが、縮小というかたちで進みそうです。
建築主は、二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える木造の建築物を建築しようとする場合等においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないものとすること。
木造の建築物で地階を除く階数が三以上であるもの又は延べ面積が三百平方メートルを超えるものの構造方法は、許容応力度計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの等によって確かめられる安全性を有するもの等でなければならないものとすること。
この「四号特例縮小法案」は、マイホームの計画をする人にはとても重要なお話になりますので、一度は目を通していただくことをおすすめします。縮小の法案を理解するためには、先ず現行制度の四号特例とは何かを理解しておきましょう。
四号特例とは
建築基準法第六条の四に基づき、特定の条件下で建築確認の審査を一部省略する規定である。「認定を受けた型式に適合する建築材料を用いる建築物」と「四号建築物で建築士の設計した建築物」については、建築確認申請の審査を簡略化して構わないというもの。これにより、必要な申請書類は少なくなり、また審査期間は短くなる。
現行の四号建築物とは
木造在来工法で建てられた2階建て以下の住宅はほとんど「四号建築物」に当てはまります。「四号建築物」とは、建築基準法第六条第一項第四号で規定する建物のことです。具体的には以下の条件に当てはまる建築物を言います。
「四号建築物」と認定されるための条件
1. 不特定多数の方が利用しない建物
2. 木造の建築物
3. 階数2以下
4. 延べ面積500m2以下
5. 高さ13メートル以下
6. 軒の高さが9メートル以下
以上の事から、現行の制度では、一般の2階建て住宅のほとんどが該当し、審査の省略が認められ建築士が設計していれば、建築確認申請に構造チェックの資料は添付する必要がありませんでした。言い換えれば、行政は四号建築物についての構造のチェックをしていないという事です。ただし、申請は省略できても構造の安全性については設計士がチェックをする必要はあります。
四号特例を巡る経緯
1983年
建築行政職員の不足を理由に、緊急措置として小規模建築物で建築士の設計によるものへ、四号特例制度が開始。
1999年
建築確認の民間開放を軸とした改正建築基準法が施工
2006年
四号特例が適用された分譲戸建て住宅で大量の壁量不足が発覚。2009年12月までにこの四号特例を廃止する(ビルなどと同じように構造の安全性を確認する)と国土交通省が発表。
2007年
構造計算耐震偽装事件を受け、建築確認申請の厳格化を軸とした改正建築基準法が施工。建築確認申請は大混乱に陥り、テレビでも度々報道されていました。
2010年
建築確認の厳格化に伴う混乱を踏まえ、当面、四号特例の継続を発表。四号特例の廃止の廃止となる。
2014年
社会資本整備審議会建築分科会が、四号特例について、引き続き検討すべき課題と位置付け。
2018年
日本弁護士連合会が四号建築物に対する法規制の是正を求める意見書を公表
4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書
重大な構造瑕疵(かし)が争点となった建築紛争で、特例が建築士の盾となり、建て主側の責任追及や設計瑕疵の立証を阻んでいたため、日本弁護士連合会は特例の全面撤廃を求めています。
2020年
改正建築士法の施工により、建築士事務所に四号建築物を含めた全ての建築物について
ここまでの経緯を見てみると四号特例の廃止は実務への影響が大きいとして、繰り返し先延ばしにされてきました。
小規模木造建築における現状の問題点
最近ではカーボンニュートラルに向けた、住宅の省エネ化が急速に進み、断熱性能の高性能化による建築物の重量化に伴い、壁量が実態に合わなくなってきており、地震時の倒壊リスクが懸念されている事と、多彩なニーズを背景として、大空間を有する建築物が増加しており、積雪時に倒壊リスク等が高まる恐れがあるということ挙げられます。
また、審査省略制度(四号特例)を活用した多数の住宅で不適切な設計・工事監理が行われ、構造強度不足が明らかになる事案が断続的に発生しているようです。
以上の事から四号特例の縮小というかたちで進み始めたようです。
冒頭の国土交通省の資料の内容を簡単にまとめると
- 四号特例廃止では無く縮小
- 壁量計算や構造図が省略できるのは平屋200㎡以下に
- 構造計算書が省略できる建物を500→300㎡に縮小
- 省エネ化で重量が増している対策に壁量計算の規準見直し
先にも述べたように、四号特例そのものは廃止されませんが、一般的な木造で2階建て以下かつ、延床200㎡以下の住宅は全て特例による設計図書の省略が出来なくなります。具体的には確認申請に壁量計算図表等の法律の仕様規定を満たしている旨の計算書と伏図・軸組図・基礎伏図・基礎断面リスト等の構造図面一式が必要になります。
しかし、許容応力度設計をした構造計算書が必要な建物の延床面積も従来500㎡以上だったものが300㎡以上に厳格化されるものの、前述の一般的な2階建て木造住宅にはまだ構造計算書は求められない見通しです。富裕層向けの大きな住宅もボリュームゾーンは200㎡台なので2階建木造住宅は相変わらず構造計算されない状態は続きそうです。
四号特例の廃止がゴールではありません。法改正がこのパブリックコメントの資料通りに実施されると、四号特例は平屋の住宅等に限定され木造住宅の主流である2階建て木造住宅は実質四号特例が無くなり、壁量計算の規定もより安全志向に改正されるのですが、これで木造住宅の安全性の問題が解決出来る訳ではありません。
構造計算書の提出義務は改正後でも延床300㎡を越える建物に限られるため、多くは整備された壁量計算等の基準にとどまります。
以上の事から、マイホームを建てようと計画している消費者が、構造計算の必要性や壁量計算と構造計算の違いについて、知識を深めていかなければならない、という事が続きそうです。
では、構造計算と壁量計算は何が違うのか
次回に続きます。